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まつりぬしの原点(アーストラスト)

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まつりぬしの原点(アーストラスト)

緑山 守
アーストラストをテーマに語る / 2006

25.手遅れ心理

人生の有限性を感じ、やりたいことが見つかっても、即刻着手できるとは限りません。さまざまな障害があるからです。なかでも「手遅れ心理」は、できない理由を考える才能にたけた私たちの心がよく持ち出す手段のひとつです。高齢を理由に、「今からそんなことをはじめても無理だよ」とか、若い人でさえ「もうそれをやりだすには遅いよ」などと言います。「坂本龍一なんて3歳からピアノをやってるんだぜ。今からじゃあ、無理無理。」などと中学生が嘆いたりします。その背景には、今からじゃあ成功できない、一流になれない、というやたら大きな成功像があるのでしょう。成功するという対価が約束されないなら、やりたくないのです。しかし、成功という恩恵に浴することばかりが本当に意義あることでしょうか。アフリカに渡り乏しい医療機器で現地の人々を助けながらもなお多くの死者に直面する医師は無駄な努力をしているのでしょうか。砂漠の緑化研究をしつつも成果がなかなか出せない研究者の努力は無駄なのでしょうか。そう考えると、成功しないならやりたくないというのは、なんとも傲慢な気がします。大切なのは、ある物事に邁進したという事実であって、それが功を奏したかどうかで否定されるなんて結果論です。しかし私たちは推測の結果論で、自分が今行動しないことを理屈付けしがちです。ある男性が29歳で勤めた会社を辞めようと思い立ち、お世話になった部署の人たちに挨拶まわりをしました。30代前半のある女性は、「私も20代なら辞めてるな」と愚痴をこぼしました。40歳前後のある課長は、「僕もあと5年若かったらなぁ」と彼を羨ましがりました。50代のある部長は「僕もまだ40なら辞めてやりたいことがあるんだけどなぁ」といいました。それを聞いて彼は、会社が好きなら頑張ればいいし、したいことが他にあれば会社を辞めてしたいことに取り組めばいいのにと一瞬思いましたが、そんな風に簡単にできないこともよくわかっていました。彼にとっても30歳を前に会社を辞めることは実は勇気のいることだったのです。彼は、年齢は都合のいい言い訳のひとつかもしれないと思うようになりました。このように年齢を理由に、したいことに着手しない心理をかりに「手遅れ心理」と呼びましょう。この「手遅れ心理」は疑ってかかったほうがよさそうです。たとえば、商家の婿養子であった伊能忠敬が星に興味を持ち、江戸幕府の天文方で勉強を始めたのが50歳。私財を投じて日本国土の測量をはじめたのが56歳のときです。74歳でなくなるときには、日本最初の日本地図は完成していませんでした。伊能忠敬は手遅れだったのでしょうか。