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まつりぬしの原点(アーストラスト)

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まつりぬしの原点(アーストラスト)

緑山 守
アーストラストをテーマに語る / 2006

12.チベットの鳥葬

チベットでは今でも鳥葬がひろく行われているそうです。鳥葬とは文字どおり、遺体を山の上に運び、ハゲタカなどの野鳥に食べさせるわけです。チベットではあくまで伝統的な葬儀のスタイルですが、今年1月、チベット自治区政府は、「チベット族が1000年にわたり維持してきた習俗を保護するため」という理由で、一般的に公開することを禁じました。鳥が食べやすくするために天葬師と呼ばれる人が刃物で遺体をぶつ切りにする様子はさすがに衝撃的らしく、その光景を心無くも写真撮影などする観光客が絶えないうえに、興味本位で報道されたりすることに精神的苦痛があるのでしょう。日本人にとっては野蛮に思えるかもしれないこの死のあり方も、同じ仏教の思想にもとづいたものなのです。映画「リトル・ブッダ」や「セブン・イヤーズ・イン・チベット」で日本人にもなじみのあるチベット仏教においては、死者の魂は死後49日までに身体を離れて、残された身体は単なる抜け殻となります。ご存知のように日本の仏教でも一般に四十九日というと忌中(きちゅう)と呼ばれ、死者がこの世とあの世の間をさまよっている期間とされています。チベットでは、さらに死後数日間は死者の魂を呼び戻さないように、死者の名前を呼んではいけないそうです。日本でもよく故人に執着する遺族に「いつまでも死者を引き止めてはいけないよ」などとさとす光景を見聞きしますが、こういうところも共通していますね。さて、こうして抜け殻となった身体は、単なる容器でありますので自然に帰すのが仏教的に一番良いし、鳥に対する布施にもなるというわけです。鳥を通じて死者を天に帰すという意味もあるそうで、鳥葬とは言わず天葬や空葬と言うこともあります。英語ではsky burial(空の埋葬)と言います。また樹木の少ないこの高地では火葬しにくいという資源的な理由もあるかもしれません。岩場の多い荒い山肌と凍土となった地面に土葬は不向きなのでしょうが、伝染病で亡くなった人などは鳥による感染を防ぐため土葬されます。とにかく同じ仏教思想でも結果として遺体の扱い方に大きな違いがあることがわかります。しかし実は日本でもかつては鳥葬が行われた地域もあるようですし、姥捨て山の話も考えてみれば一種の鳥獣葬と言えるかもしれませんね。さてここで、これまでと同じように死者の納得感について考えてみましょう。チベットの人たちは、遺体を鳥に食べられてかわいそうなのでしょうか。彼らは自分が鳥につつかれて食べられることが嫌なのでしょうか。彼らは、日本人が高額の四角い石を片寄せあうように積み上げて安心しているのをみてうらやましいと思うのでしょうか。どうでしょう。