まつりぬしの活動報告

▶︎トップ項へ
Vol.3

20日後に見つかった孤独死の部屋
<まつりぬし>にしか出来なかった遺品整理 その3

遺族の話によれば、警察署に安置されていたご遺体は、霊柩車で火葬場入りして荼毘にふし、御遺骨は、親族の住む東京の霊園に安置するとの事でした。
近年では、直葬(ちょくそう)と言って、火葬だけを執り行い葬るというケースが急増しています。時代の変化並びに孤独死の急増も相まって、宗教儀式も執らず、親戚等の弔問を受けることなく、しめやかに家族だけで弔う、葬送スタイルを否定するつもりはありませんが、 何故か腑に落ちず、違和感を持ちました。
そこで私は喪主にこう告げました。『慚愧の念を持っているだろう故人にむけて、私が学んだ儀礼をもってお送りしたいのですが』と伝えました。
するとご親族は、深々と頭を下げ、快く快諾してくれました。

直葬の早朝、事務所で『光への送り』のテキストを参考に、故人にむけた儀礼文を作成し、一行一行を食い入るように目を通し、何回も読み返しました。

約束の時間前にもかかわらず、親族は火葬場の正面玄関で、私の到着を待っていました。 館内は火葬の順番まちで、ほぼ満席状態。腰掛ける椅子もなく、棺が到着するのを立って待つのでした。火葬場には何度か足を運んでいますが、満席の館内を見たのは、この時が初めてでした。
そして棺が到着し、私達は待合室に即、案内されました。
通常ならこの待合室で、親族は故人との最後のお別れをするのですが、棺の蓋が開くことはありませんでした。
早々に、あいさつしてから、簡単な故人の紹介、そして、はなむけの儀を終えたところで、出棺の準備が整い、そこでさいごに いのりのことばを となえて お見送りをしました。

余談ですが、『光への送り』故人向けへの儀礼文作成中、終始背中に悪寒を感じていました。多分ですが、故人が私に折り重なり、私の目を通して『光への送り』を食い入るように確認していたのだと思いました。
文章を書き終えたら、背中が楽になったのを覚えています。

〈まつりぬし〉
【まつりぬしの活動記録】